より良いワークショップ企画設計・開発のための3原則 -その1- (フロー理論)
- Kosaku Toyoshima
- 2019年8月20日
- 読了時間: 6分
更新日:2019年11月7日
義務感で行動すると、それは義務を果たした瞬間体から消えるが、快楽(楽しさ)と共に覚えれば一生消えない(敬愛する菊地成孔氏の言葉より)
全国20万人のワークショップ・デザイナーの皆様こんにちは。
「より良いワークショップを実現するには?」
「そりゃ場数でしょ」
これは一つの真理なんですけど笑、まあそれでも良いワークショップにはある種の共通性があるので、それをワタクシなりに抽出させて頂いて、「ワークショップやってみたい!」という人の何かしらのキッカケになればと思っております。
色々な試行錯誤の結果ですが、ワタクシなりに3原則とは、
フロー理論
独考←→集合知サイクル
心理的安全性の担保
と考えています。
ちなみに、ビジネス界隈で「ワークショップ」というと、なんとなく集合知獲得型の研修みたいなイメージが定着してる感ありますが、もともとは、子供がアウトドアでの遊び方を習得したり、みたいな体験型の教室も含まれる意味合いですし、
ですのでここで言う「ワークショップ」とは広義の「体験型の学習」のことであって、以下説明はアート方面からビジネス方面まで、割と広範に適用できる話と思います。
本日はこの1番目、「フロー理論」の説明になります。
ワタクシがこれに始めて出会ったのは、LEGO® SERIOUSPLAY®メソッドのトレーニングで、フロー理論の学術的説明は他に譲りますが、提唱者はハンガリー出身の心理学者、ミハイ・チクセントミハイ氏(まだ存命)です。
この理論を一言で説明しようとするのはなかなか危険ですが、フロー理論により説明される「フロー状態」になると何が起こるか?
師のひとり、Robert Rasmussenの言葉を借りれば、「難しかったけど、楽しかった!」という状態になります。

図解するとこんなんですが、縦軸に「課題(問いかけ)のむずかしさ」、横軸に「参加者のスキル」を取ると、フロー状態になるゾーン(FLOW ZONE)はこの赤っぽいエリアになります。
言葉で説明するとなんてことないんですけどね、要は、参加者のスキルと課題の難易度がうまい具合にバランスが取れている状態が「フロー状態」なので、たとえばこんな状態はダメな例なわけです。

右下、参加者のスキルや知識は高いのに、課題が簡単だとそりゃつまんないモードになり、左上の、スキルが十分でないのにいきなり難しい課題だと、もうやる気なくします。
ではフロー状態を維持するには?そのプロセスを図解すると以下のような形になります。

こうやって見ると、「スキルに合わせた適切な難易度の課題を」という、至って普通の、なーんてこと無いように見えるんですけど、このフロー状態を維持するには
「参加者の状態の観察と、それに応じた課題の調整」
が必要になるので、実際にはかなり神経を使います。
難しいのは、LEGO® SERIOUSPLAY®メソッドや、他の「その場の雰囲気で課題を変えられる」ようなものであれば、いくぶんか適用可能ですが、ビジネス系ワークショップの多くで見られる、「スライドで進行の型がある程度決まっている」ようなワークだと、リアルタイムでの調整が難しい、というか、ライブ感をなかなか作りにくいんですよね。
ちょっと話が脱線しますが、この「フロー状態の維持と参加者の状態の観察」ってのは、何も大人相手の話だけじゃなくて、子育てにも通じる話なんですよ(というか、もともとチクセントミハイ氏の理論が教育心理学的な側面もあるので当然っちゃ当然なんですが)
先日、とある場で子供とその親、保育士が集まる場に出向いたのですが、
ある親が子供と一緒におもちゃで遊ぼうとして、当のその子がものすごくつまんなそうにしてたんですよ、それでその親は「なんで遊ばないの」と若干のフラストレーションを垣間見せたのですが、それを見かねた保育士の方が「こういうおもちゃで、こういう遊び方してみてはどうでしょう?」とアシストされまして、その親の方もなんだか新鮮な気持ちになられて、という場に出くわし
(いや、こう書くと自分があたかも出来てる親みたいな見方になっちゃいますけど笑、それみて翻って自分も子供に無茶振りばかりしてたと顧みたんですけどね笑)
子育てのプロ(親)と、子供の様子を観察するプロ(保育士)はやはりある面で観点が違うのを目の当たりにしたわけなんですけど、
たとえば人財育成のプロには、人財の観察眼なんてのも含まれるとは思いますが、「ワークショップの現場で参加者の様子を観察する」というのはまた別の特殊技能、と思ったわけです。
私のポリシーに、敬愛する菊地成孔さんの言葉で
「義務感で行動すると、それは義務を果たした瞬間体から消えるが、快楽(楽しさ)と共に覚えれば一生消えない」
というものがありますが、子育てしかり、より良いワークショップの企画設計・開発しかり、このポリシーは通ずるものがあります。
ただ、この「参加者の(スキル獲得)の様子に合わせた適切な課題の提示の手順」を体得するには、やはり場数を踏んでその場を空気を吸うしかないんですけど笑、
それでも、「今、参加者はフロー状態か?」ということに自覚的になることで、よりリフレクションが良いものになる、とは思っております。
さて話が脱線したようで戻ってきましたが、つまるところ、
フローゾーンを右上に進んで、その先には何があるの?
という点ですが、私の考えでは(これはビジネス系、もしくはアカデミズム系ワークショップ寄りの話になりますが)
「なんとなく正しいと思っている前提」
を問い直すことが目的、と思っています。

あらたな「問いを立てる」とか言えるとカッコイイんですけどね笑、
すごーく楽しいワークショップでも、終わってみると素朴な疑問を改めて自分に投げかけていたり、ということも多い気がします。
もちろん、音楽学校のように、何かしらの技術・技法習得するためのワークショップでは、ワークショップを通じて高まったスキル・知識自体が成果物ではあるんですが、
「当たり前と思っていたものが実は当たり前じゃない、、、?」
スキルを高める前には見過ごしていた、そんな素朴な問いに出会い直すことができる、、
そんなところも、ワークショップの魅力の一つ、と思います。
ではまた!
ちなみに、チクセントミハイ氏、Wikiによるとティーンエイジャーの頃にユングの話を聞いて心理学を志したらしいんですよね。そうなるとこの記事もユング派に依拠した言説、ということにはなりますが、「快楽(楽しさ)と共に覚えれば一生消えない」というのは、フロイディアンの皆様も同意頂けるものと信じておりますので笑
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