「なんであの人は仕事ができないんだろう」の、その先を考える
「なんであの人は、あの仕事ができないんだろう」。
チームがうまく回らないとき、アウトプットが出ないとき、得てしてそういう話は、誰か一人、個別の誰かの「できる・できない」に向かっちゃうことがあります。
たしかに、そういう話はしやすいんですよね。目の前に見えているのは、その人の動きなんで。
1.「パフォーマンス × 工数」の、パフォーマンスって何?
そうなると、次に出てくるのは、その人がどれくらいのパフォーマンスを発揮しているのか、何にどれくらい時間を使っているのか、その時間の使い方は妥当なのか、という話です。
ざっくり言えば、こんな見方。
パフォーマンス × 工数(時間)
ここではひとまず、パフォーマンスを「その仕事でどれくらい力を発揮できるか」という意味で使っています。
その力と、投入する時間の組み合わせで、仕事の進み方を捉えてみる。工数管理でおなじみの話ですね。
ただ、この「パフォーマンス」という言葉が、考えてみると大変に多義的で、結構いろんなものを含んでいる。
仕事が速い、正確である、自分で判断できる、周囲と調整できる。
どれもパフォーマンスの話ではあるのですが、じゃあ、それぞれ何によって成り立っているのか。
そこを一括りにしたまま「もっとパフォーマンスを上げてほしい」と言われても、言われた方は、「まあ、そう言われましても・・・」となるわけです。
そして、その話を続けて何かが前に進むかというと、そこはまた別の話で。人物評だけが妙に詳しくなって、仕事の方は相変わらず進まない。チームとしても、十分なパフォーマンスを出せていない。
それじゃ困るわけですよね。
そこで少し、見る範囲を広げてみると、どんな景色が見えるでしょうか。
2.個人の課題と、チームの課題を並べてみる
まず、立ち止まって考えておきたいことが二つあります。
その個人が向き合っている課題は何なのか。
チームとして向き合うべき課題は何なのか。
この二つは、あえて並べておきたいと思います。個人の担当業務が順調に進むことと、チーム全体が課題を解決できることは、必ずしも同じではないので。
たとえば、一人ひとりは自分の担当をきちんと進めていても、その間の受け渡しで仕事が止まっているかもしれない。誰かが調整役を引き受けないと進まないのに、全員が自分の作業を速く終えることだけに集中している、なんてことも考えられます。
そういうときに、個人の作業時間だけを見ていても、チームとして何が足りていないのかは見えにくい。
個人とチーム、それぞれの課題にはどんな難しさがあって、何が求められているのか。その要求に対して、今の役割分担や仕事の渡し方はどうなっているのか。
そのうえで、その人の資質、スキル、それからスタイル(型)、はどうか、と考えてみる。
3.「できない」の中に、違う話が混ざっていないか
ここでは、この三つを、ひとまず次のように分けて捉えています。
資質――何に自然と目が向くか
何に関心を持ちやすいか、どんなことに自然と注意が向くか、といった、その人の傾向とも言えます。クリフトンストレングスの「ストレングスファインダー」が有名ですが、これに限らず、「あの人にはマネージャーとしての資質がある」みたいな文脈でも使われますね。
スキル――何を身につけているか
経験や学習を通して身につけた、具体的な知識や技術です。
仕事の進め方がしっくり来ていても、必要な知識や技術が足りなければ、そこでつまずくことはある。
スタイル(型)――どう捉え、どう進めるか
物事をどう捉え、どう判断し、どう進めるかという、仕事への向き合い方です。
同じスキルを持っていても、スタイルが違えば発露が異なる。
たとえば、「情報収集スキル」と言った場合、情報を集めて整理してから話したい人もいれば、話しながら考えを整理する人もいる。この違いを、そのまま能力の高い・低いに置き換えてしまうと、少し話がおかしくなってきます。
ちなみに、スキルとスタイルをかけ合わせて「スカイル」と表現することも、人材育成界隈で見かけるようになりました。
てなわけで、自分の中では、これを次のように置いてみると、少し整理しやすくなりました。
資質 × スキル × スタイル(型)= パフォーマンス
ちなみに、「資質」については、「マネージャーとしての資質に欠ける」みたいな構文もありますが、その資質を満たすための能力は?みたいな「禅問答因果ループ」になってしまうので笑、ここでは「その人の持ち味」みたいなニュアンスにとどめておきたいと思います。
話を戻します。
資質 x スキル x スタイル(型)、この掛け算は、三つの要素が関わり合って、仕事での力の出方が変わることを表すメタファーです。そして、その組み合わせが活きるかどうかは、向き合う課題によっても変わってくる。
ここを分けて考えると、「できない」の中にも、いくつか違う話が混ざっていそうだと気づきます。
知識や技術を身につければ進む話なのか。進め方の型を変えたり、別の型を持つ人と組んだりするとよいのか。あるいは、今任せている課題そのものと、その人の持ち味との間に無理があるのか。
見立てが変われば、次にやることも変わります。
知識や技術が足りないなら、練習や経験の機会をつくる。
進め方が噛み合っていないなら、仕事の渡し方や、一緒に進める相手を変える。
役割の組み合わせに無理があるなら、分担を組み替える。
課題と持ち味の間に大きな隔たりがあるなら、配置を見直す。
もちろん、分けてみたらすぐに答えが出る、というものでもないのですが、少なくとも「もっと頑張ってほしい」の先に、考えられることが出てくる。
一人ひとりについて、そういう棚卸しをしてみる。そのうえで、今この人がこの課題を担っている状況は妥当なのか、チーム全体としてこの組み合わせでよいのかを、もう一度見る。
自分にとって大きかったのは、こういうふうに、問いの置き場所が変わったことでした。
4.ただ、チームはスナップショットのままではいてくれない
ここまででチームの話が全部片づくかというと、そうもいかない。
というのも、ここまでの整理は、ある時点での人と課題の関係を切り取った、一枚のスナッ
プショットでもあるからです。
つまり、スタティックな状況・および構造を指し示しているに過ぎず、日々の営みの中では、時間軸の概念、つまり、「その構造に影響を与えるダイナミズムは何か?」という力学を読み解く必要があります。
誰がいて、どんな持ち味があって、何を担当しているのか。そういう構造は見えてきた。でも、チームはその図のまま、じっとしていてはくれない。昨日ごきげんだった人が、明日不機嫌になることもある。
相談したり、言いそびれたり、助けてもらったり、ちょっとした行き違いが残ったりする。
そういう日々のやりとりが、次の日の仕事の進め方や、相手との関係を少しずつ変えていきます。
そこで、構造に動的な影響を与えるダイナミズムとしてのコミュニケーションの話が入ってきます。
何を伝えるのか。どういう言い方で、どのタイミングで伝えるのか。そして、そもそも、その相手とどういう関係にあるのか。
同じ内容の指摘でも、「この仕事を一緒によくしようとしている」と受け取れるときもあれば、「また自分が責められている」と感じるときもある。言葉の内容だけでは、その違いを説明しきれないんですよね。
相手が何を大切にしていて、どこで困っているのか。普段からどのくらい話せていて、お互いの意図をどう受け止めているのか。
そういう関係の状態が、目の前の言葉の届き方に関わってくる。
そして、言葉の届き方が、また次の関係をつくっていく。
たとえば、困ったことを相談できれば、周囲もその人の状況を知ることができます。状況が分かれば、仕事の渡し方や役割分担を調整できる。そこで少し仕事が進めば、次も早めに相談してみようと思えるかもしれない。
逆に、相談するたびに話が噛み合わなければ、だんだん相談しなくなることもある。周囲には事情が見えなくなり、また「なんであの人は」という話に戻ってしまう。
人と課題の組み合わせを捉えるのが、いったん立ち止まって見るスタティックな構造の話だとすれば、こうしたやりとりは、その構造が時間の中でどう変わっていくかという、動的な話として捉えられそうです。
もちろん、スキルも、仕事の進め方の型も、経験によって変わっていきます。静的というのは、人が固定されているという意味ではなく、まず現在の状態を切り取って見てみる、ということです。
5.一週間後、一年後に、どうなっていたいのか
現在地が見えたうえで、では、一週間後にどうなっていたらよいのか。一年後には、どんなふうに仕事を進められるチームになっていたいのか。
そう考えると、配置や役割を見直すことと、日々の関わり方を見直すことは、セットで考えておく必要がある。(ちなみにこの「配置」についてはやはりドゥルーズ的に解釈できます、がそれを言い出すと盛大に話が脱線するのでまたの機会に笑)
誰をどこに置くかが見えても、その人が何を相談できて、周囲がそれをどう受け止めるかが変わらなければ、仕事はまた同じところで止まるかもしれません。
一方で、よく話せる関係になって、初めて気づく適性や、任せてみたい仕事もあると思います。関係が変わることで、配置の見え方も変わってくるわけです。
ここまで考えると、棚卸しの対象には、当然、自分も入ってきます。
自分は、どんな進め方を当たり前だと思っているのか。どんな説明だと理解しやすくて、どういう相談のされ方だと受け取りにくいのか。その型が、相手の力を引き出す助けになっているのか。
人のことは細かく見えても、自分の型は「普通」として処理してしまいがちなので、このあたりは少し立ち止まっておきたいところです。これは自戒も込めて。
6.人物評の、その先に進むために
今回、自分が得たのは、チームの問題にすぐ答えを出せる方法、というより、どこから考え始めればよいかという見取り図でした。
整理すると、見ておきたいのは、この三つです。
課題を見る。個人とチーム、それぞれが何に向き合い、何を求められているのか。
組み合わせを見る。その課題と、資質・スタイル(型)・スキル、そして役割や配置が、どう噛み合っているのか。
やりとりと、その変化を見る。日々のコミュニケーションが関係をどう変え、その関係が次の仕事にどう影響しているのか。
そうやって見る範囲を広げていくと、
「なんであの人は仕事ができないんだろう」
という問いから、
「何を変えると、この人や、このチームは力を発揮できるんだろう」
という問いへ、少し移れる気がしています。
ゲラゲラ笑いながら仕事する間柄でありながら、必要なことは言い合えて、お互いに切磋琢磨もできる。
そういうチームを考えるときに、誰かについての評価を一つ増やすより、明日の仕事の渡し方や、次の相談の仕方が一つ変わる。そのくらいのところからでも、何か前に進む糸口になるんじゃないかなと思っています。
ここまで書いておきながら、「ダメなやつはダメ」みたいな話も世の常ですが笑、そこは「評価制度や規範」の話とセットかなと思うのと、評価制度は法律みたいなもんだと思いますが、法律を守る意識のある民衆がどれくらいいるか、みたいな、やや風呂敷を拡げた議論になると思うのでこのへんはまた別の機会に考えてみたいと思います。
以下にて、今回の見方と接点のありそうな研究をざっとサーチしてみました。ご参考まで。
みなさんのチーム運営に幸あれ!
人と仕事・チームとの適合Kristof-Brownほか(2005):人と仕事・組織・チーム・上司との適合を扱ったメタ分析。
チームが時間の中で変化する循環Ilgenほか(2005):チームの条件、相互作用、成果、次の状態への循環を捉える枠組み。
関係性とコミュニケーションの相互作用Gittellの関係的調整理論:共有目標・共有知識・相互尊重と、コミュニケーションが互いに関わる仕組み。
信頼と、意見の対立の受け止め方Simons & Peterson(2000):チーム内の信頼と、仕事上の対立が対人関係の対立に結びつく程度との関係を調べた研究。



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